────キス、された。




そう頭が理解できたときにはもう腰の力なんてすっかり抜けて、私は床にへにゃりと座り込んでいた。



その頭上では、くすりと笑う声と。


「そんなによかった?」


……生意気な、弟の顔。



弟、といっても血は繋がっていない。


小さい頃から家族ぐるみで年に1回会うか会わないか程度の交流をしている、いわば幼なじみのような存在。それが彼だ。



「……どういうつもりよ、廉」


キッと睨んで見上げた私を、こいつ───廉(レン)は、満足気に笑みを浮かべて見下ろしている。


なんて生意気に育ったんだろう。