「おい神野、また寝てんのかよ」 その先生の声に教室中が固まる 「琴宮、そいつ起こせ」 きっと彼女は困っているだろう 「はやく、ド突いてもいいんだぞ」 そしてその声で、みんなが彼女を見た でも彼女にはやっぱり、表情がなかった 彼女がゆっくりと腰を浮かせ、隣に手を伸ばした ────────その時、 男の上半身が、スローモーションのように起き上がる 男が彼女を瞳に写し、 しばらくの間 視線が絡み合う その瞬間、俺はあの二人だけが映る世界を 遠くから見ているような気がした