あの男の、となりで



3時間目は数学だった


数学の担当教師が言った


「名前は… ことみやみづき? だな?」


俺は聞き逃さなかった


少しでも彼女のあの大きな瞳に映りたかった



「みづき、じゃなくて みつき、らしいです

先生」


シンとする教室に俺の声が響く


「そうなのか」 と納得した先生から目を離し、彼女の方を振り返った



しかし、彼女は俺を見ていなかった




ただ何も映さず、表情を隠して


どこかに自分を閉じ込めているみたいだった