「琴宮 美月(ことみや みつき)です よろしくお願いします」 彼女のその声は小さかった でもこの教室の全員の耳にしっかり届くほど、澄んで聞こえた 「席は一番後ろの窓から二番目」 そう言われた彼女が、白く折れそうな細い脚で歩き出す 彼女が教室の机と机の間を通って席につくまでの間、みんなが彼女を見ていた きっとここにいる全員が、目を奪われていた あるひとりの男を除いて──────