隣のアイツ

すると向こうから足音が聞こえた。


「あ、やっぱいた。沙奈!」


振り返るとそこには圭太の姿があった。


「けい…た」


やばい、さっき頑張って引っ込めた涙が出てきそう。


「おせーから心配したんだぞ、何やってたんだよ」


ちょっと怒ってる風の口調。


「ご、ごめん…滑ってコケて…た」


この言い訳は無理がありすぎる。
コケただけで何十分もまたせる理由には全然ならない。おかしいもん。


「…なんかあったの?」


何かを察したんだろう、きっと。
でもあんなとこ知られたくなくて…曖昧に誤魔化す。


「ううん、大丈夫!ごめん、ほんと待たせちゃって。お母さんも待たせてるし、急いで行かなきゃね!」


「…あぁ」