「手ェ離せよ、歩きにくい」
「いーじゃん、
今日だけ、今日だけ」
「特別オプション代でも、払ってくれんの」
ケラケラ笑う、“ショウ君”と呼ばれていた、水城君。
皮肉まじりの言い方や、低い声で、やっぱり水城君なんだと確信した。
家族、にしては無理があるその距離感。
いきなり立ち止まったかと思えば、女の人が水城君の腕をひいて、唇が重ねられた。
水城君は反応もせず、されるがまま状態。
「......ど?特別オプション代になった?」
「いや?ぜんっぜん足りないと思うけど」
「ありゃりゃ」
恋人同士、なのかな。
やだ、なんでだろ、
水城君はただの後ろの席のクラスメート、ただそれだけなのに。
なんで、こんなに胸がモヤモヤするんだろう。
