「産まれましたよ。どうぞ。」

と 看護師に 声をかけられたのは それから30分後。


あまりにも 早い出産に 智之は驚く。


分娩室の中は 元気な泣き声が 響いていた。
 

「麻有ちゃん ありがとう。早くて驚いたよ。」


分娩台の 麻有子に駆け寄る。
 

「ありがとう。あっと言う間に 産まれて。親孝行な子よ きっと。」


と麻有子は 余裕の笑顔を見せた。

麻有子の胸の上 元気な 泣き声を上げている 裸の赤ちゃん。
 

「お父さん 元気な男の子ですよ。」

と看護師が 赤ちゃんを抱き上げる。


麻有子と 笑顔を交わし ピースサインを する智之。
 

絵里加の時のように 赤ちゃんの処置を 見守る。


絵里加を 見慣れているせいか

赤ちゃんは 小さく 頼りない。


測定した体重は 絵里加の出生時より 重いのに。


絵里加に よく似た 綺麗な顔立ちで。


でも何となく男の子らしい。
 


「お父さん どうぞ。」

と言われて 抱き上げると 

赤ちゃんは 一瞬 泣き止んで 智之を見つめる。
 

「わあ。可愛い。いい子だ。」

そっと 赤ちゃんに 頬ずりをする智之。


分娩台から 満足そうに 見つめる麻有子。



幸せな家族の誕生。

今日から 四人家族だから。


二児の 父親になった智之から 


幸せな責任感が 溢れ出していた。