智之が 食事から戻ると 父も病室にいた。


陣痛の合間は 談笑する麻有子。


でも 痛みがくると 顔を歪めて 痛みに耐える。


智之は なすすべもなく 腰を擦ったり 手をにぎったり。
 


面会時間が 終わるアナウンスに、
 


「私達は 帰るから。智之、お願いね。」

と両親は帰ってしまう。


陣痛の間隔が 大分短くなっていて 苦しい時間が 続く麻有子。
 


「麻有ちゃん、大丈夫?頑張って。」


麻有子の頭を撫でながら 声をかけるしかできない智之。


『俺の子供を 産む為に 麻有ちゃんは こんなに苦しんでいる。』



変わってあげられない苦しみ。


耐える麻有子の強さ。



赤ちゃんを産む ということの責任。



色々な思いを噛みしめて 智之は 麻有子に寄り添っていた。