心の穴は 塞がることがないまま 日々は過ぎていく。



賢くて穏やかな智之は 友達も多く 楽しい学生生活を送った。

隠している虚無感は 自分一人のものだから。


誰かを攻撃したり 反発したりせず。

少しずつ心の穴に慣れていく。



大学生になると 行動範囲も広がり 気分転換が 上手になっていく。


お酒は 苦手だったけれど 大勢で騒ぐことは 楽しかった。



合コンをすれば 必ず女の子は 智之に付いて来た。


裕福な仲間は 夏は海、冬はスキーと 遊びには事欠かない。



でも 心の穴を 閉じることはできなかった。
 


楽しいと思う時間は 一瞬で。


その後の空しさは 余計に智之を苦しめた。



女の子と付き合っても 夢中になることができない。


いつも どこかが醒めていた。


最初 智之に付いて来た女の子も 智之の壁を感じて 自然と離れていく。



“ 俺は どこかが壊れている ”



智之の自己嫌悪は 情熱と自信を奪っていく。