仕事が忙しい父は 毎日帰りが遅く 

休日も 家を空けることが多い。


だから朝は 家族揃って食事をした。
 

「智之、学校はどうだ。もう慣れたか?」

受験をして合格した 名門大学の付属中学。

智之と入れ違いで 兄は 今年卒業した。
 

「うん。まあまあかな。」

聞かれれば 素直に答える智之。

反抗的な態度はしない。
 

「まあまあって、何だよ。」

プッと吹き出す兄。

智之も一緒に笑ってしまう。


温かい空気が流れる 朝の団らん。
 


「もうすぐ 最初の試験だろう。頑張れよ。」

他人事のように言う兄に 
 

「お兄ちゃんも 一緒じゃないの?」

と智之が聞き返す。


しまった、という顔をする兄は 家族のムードメーカー。


二人の会話を 聞いている 父と母の表情に 


微妙な違いがあることを 智之は気付いていた。