「ねぇ、どうして泣いているの?」

自分と同い年くらいの男の子が、屈んで覗き込んでくる。

あっ、そうだと声を上げると、シロツメクサの花が咲き乱れる原っぱに駆け出した。


「はい!もう、泣かないで!!」

差し出された手には、花かんむりが握られている。


「ぐすっ...あ、あのね...ぴ、ピン止めをね...落としちゃったの...ままにもらったのに...」

鼻をすすりながら、途切れ途切れにしゃべる私に真摯に耳を傾ける男の子。

「じゃあ、俺がいっしょに探してあげる!ほら、さがそ!!」

けれど、やっぱり草で覆われた原っぱから、小さなピン止めを探し出すなんてそう簡単 なことではない。

すっかり、日も落ちて辺り一面がオレンジ色に染った。


やっぱり、見つかりっこないんだ。

そう思ったら、なんだか、本当に悲しくなってきて目頭が熱くなった。

「あっ!あった!!あったよ!!これでしょ!?」

「えっ!...うん。それだよ!ありがとう!!!」

男の子は陽だまりみたいな笑顔を浮かべて、私のお気に入りのピン止めを高々と上げた。


オレンジ色の光に反射してキラリとピン止めの金属部分が光った。

けれど、そのお気に入りのピン止めよりも、その男の子の笑顔の方に目を奪われてドキッと胸が高鳴った。


その時から、きっと私はあなたに恋をしている。