どのくらい、時間が経ったのかぼやける目を擦った。

前に、誰か立っている。

まだ、ぼやけている両目を再度擦って、目を凝らした。

「...嘘」

思わず、声が震えた。

「なんで居るの?」

「君に会いたかった」

彼は、笑顔で言った。

何かが喉の奥に突っかかって、一言でも言葉を発すれば全て溢れてきそうだった。だから、私は、なにもしゃべれなかった。

「今日はね、君にこれを渡しに来たんだ」

夏の日差しに照らされて、それはキラリと輝いた。

「僕と、結婚してくれませんか」
「...っ...はい」


きっと、人生に一度きりのプロポーズだというのに、もう、他に言葉が出てこなくて、私の辞書からはい以外の言葉が消されていて、でも、涙っていうのは言葉が無くったって出てきてしまうもの。

本当に、よく分からない。

ただ、あなたにそんなことを言われたのが嬉しかったんだと、幸せだったんだとそう思うのだ。