一歩車両から出ると、けたたましい蝉の鳴き声が夏を感じさせた。


懐かしさに溢れたこの町の、小さな“秘密の道”みたいな小路を通って、あの大きな桜の木と辺り一面に広がるシロツメクサの原っぱへ足を進めた。


大きな桜の木は、やっぱり今も健在で、あの日と違うことと言えば、花ではなく鮮やかな淡い緑色の葉が生い茂っていること。


日陰になっている、その木の下に腰を下ろした。


きっと、朝早く起きたせい。


目を閉じたら、うつらうつらしてこんなに暑いのに眠ってしまうんだから。