カツカツと、自分の靴の音だけが街を木霊した。

駅のホームには、まだ人気も無い。


電車が、ガタンガタンという鈍い音を奏でながらやって来て、同じ車両に乗っている人は二、三人だというのに、席には座らず扉の横に寄りかかった。


──カタン...カタン

振動が心地よく伝わってくる。

冷房の効いた車内は肌寒くて、羽織る物を持ってこなかったのは失敗だったかも。

目を閉じると、今朝見た夢が思い出されて心が暖かくなる。


乗り換えをして乗った小さな私鉄。なんだか、小さいあの町はこの私鉄みたいで懐かしい。


「まもなく...〜」


あの町の気配がする。大きな桜の木。その葉のあいだから漏れた木漏れ日。シロツメクサが咲き乱れた原っぱ。