疾走したら、恋。



その日の放課後。

吏名は、男子陸上部の部室を訪れた。

今日がその、マネージャー選考の日で、志望動機等を聞いた上で、2人に絞るらしい。

だが、ポスターに明記されてなく、どこ集合なのかよく分からなくて、ここに来た。


ドアノブに手をかけて開けようとしたが、

男子の部室だしな…

と、少し躊躇する。


「何してるの?」


後ろから、男子に声をかけられる。

振り向けば、陸上部員らしい男子生徒がいた。


「マネージャー選考の日、今日だって書いてあったので。…けど、場所分からなくて」

「書いてなかったっけ…ごめんね。
校庭の端でやるつもりだよ」

「分かりました、ありがとうございます」


お礼を言って立ち去ろうとすると、彼はまだ続けた。


「てか、陸上部のマネージャーなんて、やってくれる女の子いるんだ」

「…え?」

「うちの部活、男臭いだけだよ。特に楽しいとか無いと思うけど」

「陸上は、本来楽しいものであるべきです」


吏名は意味深な言葉を呟く。

男子部員は口をポカンと開けていたが、何となく触れちゃいけないような気がして、口を噤んだ。


「…あ、ああ…きっと部長も喜ぶよー!マネ希望の女子いたって、伝えておくね。
じゃ、また後で」


お互いに軽く会釈して、吏名は1人、校庭の端に行く。


「部長、か…」


1人そう呟いて、目を伏せた。