「あれは、中3になる前の記録です」
「あ、そうなんだ。でもそれからもずっと優勝してたでしょ?」
「…まあ、それは」
「俺は中学までサッカー部だったけど、早乙女さんのことを知ったのがきっかけで、高校から陸上やろうって思った所あるんだよね」
「そうなんで…」
吏名は頭の中で、彼の言葉を反芻して、
「高校から始めてあんなに速いんですか?!」
と聞き返す。
「え…まあ、サッカーもそうだし野球も小学生の時やってたから、走るの慣れてたし…」
「だとしても凄いですよ!」
「そーう…?」
吏名が楽しげな笑顔で頷くと、吏久は
「早乙女さん、陸上のことになるとそんな楽しそうにするんだ?」
「え…」
突如我に返って、顔を少し赤くして伏せた。
「陸上大好きなんだね」
「好き、でした」
「過去形?」
「今もそれなりに好きですけど…1番楽しかった中2の頃ほどではないです」
「だから、やめちゃったの?それとも怪我?」
吏名はその言葉に、吏久をじっと見つめた。
「どこも悪くないです。…なんというか、走るモチベーションが無くなってしまったから」
「まあ…最高記録出しちゃったらそうか…」
「根本は、それですね」
何とも意味深な発言をする。



