side凛斗

零が行ってしまうと
俺と福原の二人だけになった。

気まずい空気が流れる。

さっき感じた気持ちは…そうだ。

昨日神田に告白されてたのを見た時に感じた息苦しさに似てる。

心臓がズキンと音を立てる。痛い。

キス…した時と同じだ。
福原といるとふとした時に
感情が狂ったようにおかしくなる。

高揚感、怒り、気まずさ、そう、今も…

「もう!千晶ちゃんも美音ちゃんも
繋がらないよ〜。」

スマホをいじる福原を夕日が照らす。

いつもより少し高くしている
ポニーテールの後れ毛と

グロスでほんのり強調された唇。

いつもは見ない浴衣と合わさって
可愛いというか色っぽくて思わず目を逸らす。

その場しのぎでスマホを覗き込むと、
LINE が来ていた。

零からだ。

'“俺が美葉菜ちゃん狙うっていうのは嘘だよ。凛斗そろそろ気持ちに素直になったら?“

“俺の気持ちってなんだよ?“

そう打つと、返信が来る。

”気づかないの?“

“だから何?“

次の零からの LINE で俺は言葉を失った。

“美葉菜ちゃんのことが好きなんでしょ?
さっき俺がいた時すごい顔してた。“

“バカ言うな!“
一応否定したが

「福原を好き。」

その単語に今までの
イライラモヤモヤがしっくり収まる。

今までの自分でも分からずに
整理できなかった気持ち。
その全部が

「好き」

その一言で括れるものだった。

そして神田や零が福原と絡んだ時に感じる
イライラ。

これはドラマとか本で見る嫉妬
というもんだろうか?

出会ってまだ3ヶ月しかたっていないだとか

E クラスだとか

そういうごちゃごちゃした理屈は
完全にどうでもよくなっていた。

福原と目が合う。

関心のないふりして慌ててそらす。

好きを自覚してすぐだからなのか
まともに目すら合わせられない。

でもこれだけはハッキリしてる。

「福原が好きだ。」