「いくら二人とも興奮してるからって
アレはよくない。

大地の気持ちの押し付け。

桜沢くんの言い方。

少しは相手の事も考えたら?
福ちゃん泣いてたよ。
女子傷つけてどうすんの?
言っていいことと悪いことの
区別もつかないの?」

的確に静かに激怒している松本君。

神田くんも凛斗も反省しろ。
松本君の言うとおり女子を傷つけんだ。
最低だと思う。

「ちょっと冷ましてくる。」
松本君が外へ出て行った。

「お前ら冷静になれ。」
そう言って松本君の後を追うと
3階から2階へつながる階段にいた。

「びっくりしたでしょ〜」
そう言って笑う顔、いつもの松本くんだ。

「福ちゃんさ、あんまり泣かないんだよ。
家がなくなった時も、
転校したばかりで一人ぼっちだった時も
泣かなかった。
この前桜沢くんに振られた時泣いて
びっくりしたけど、今回はそれ以上。
それ以外はいつもニコニコしてて元気。
怒るとこなんて見たことない。
もちろん今回のようなショック顔も
泣くのをこらえる顔も。」

「ふーん。」
何となくわかる気がする。

向日葵みたいな雰囲気の子だから。
常に明るく元気なイメージ。

「だから少しびっくりして、
何で二人とも福ちゃんの
気持ち無視なんだろう?と思って。
大地みたいに自分本位の
正義感を振り回すのはいけないし、
桜沢くんみたいに
大声で聞いてる人のことを考えずに悪いことを言うのはも良くない。」

松本くんに同感。

「でも桜沢くんは福ちゃんを
好きになりかけてる。本人自覚ないけど。」

「よく見てるな。」

「見てれば分かる。だから大地も焦ってる。福ちゃん鈍感だから…」

言葉の節々、口調に
友達を大切にしている思いがこもってる。

「だから俺は福ちゃんを大事にしてほしい。大切な幼馴染だから。」

「ごめんね!浩輝、零!」
振り向くと美音だった。

「私先走りしすぎた。
美葉菜ちゃんのこと協力してくれる
って言ってたから、
今回の旅行で進展してくれれば
いいなと思って。
でも大地くんと凛斗の間のこと
全然考えつかなかった。」

「うん、大丈夫、気にしないで。
福ちゃんどうだった?」

「落ち込んじゃって散歩してくるって
出てっちゃった。」

「大丈夫、きっと気分転換してくるよ。」

そう、松本くんの言う通り大丈夫、大丈夫。