side凛斗

「じゃあ、みっちゃんよろしくねー」

今日は会議とかで部活がないので
俺と福原も早く帰ってきていた。

母が進斗のダンスのレッスンについていくのに玄関を出たところで福原に会ったらしい。

俺は福原を見ると、
さっきの満面の笑顔を思わず“可愛いかも“
と思ってしまったことを
思い出してしまうから、 
LINEで“先に帰る“とメッセージだけ入れて
帰ってきていた。

帰り際にどういう意味か美音に
「美葉菜ちゃんだけのせいじゃないから
一方的に責めないで」と言われたけど
意味不明なのでとりあえず放っておこうと
思って机に向かっていた。

しばらくすると綺麗な歌が聞こえてきた。
廊下に出ると福原の部屋からだった。
テレビで聞いたことのある
人気アイドルのヒットソング。
綺麗で伸びやかな美しい歌声を
思わず聴いていると、違う曲に変わった。

さっきとは変わって強く
すごくメッセージ性がある激しい歌声が
曲にマッチしている。
ドアに思わず近づいて耳を当て、
聞いているとドアが開いて、
福原が出てきた。

「桜沢くんどうしたの?」
顔を一気に赤く染める福原は
俺より20㎝ほど背が低いので、
自然と俺を見上げる。
そして自然と上目遣いになる。

「別に、歌上手いんだな。」

「いつもカラオケで負けると
全額負担になっちゃうから練習した。」

「へー。すごいな…」

俺は何をやっているのだろう。

部屋に戻ろうとすると

「待って」
と服をギュッと掴まれた。

「すいませんでした。」

いきなり頭を下げられる。

「何が」

何のことか分からず戸惑っていると、

「あの…クラスメイト達に住んでることが
バレちゃった。」

美音が言っていたのはこれだったのか。

「別に…美音に福原だけのせいじゃないって言われたし…」

つーかその上目遣いやめてほしい。

すごく第三者から見たら告白してる雰囲気になってるから。