side凛斗
今日の午前中ずっと美音がいなかった。

事情を知っているらしい
零がごまかしていたし、
美音のことだから
成績が下がる心配なんてないけど、
気になったので一応美音に聞いてみた。

「午前中どこいったの?」

「中庭」

テンション高く ジャーン と
擬音付きでスマホの画面を見せてくる。

「何が…?」

「気づかないの?マジ鈍感!」

「いや、わかったけど何が言いたいの?」

画面には見覚えのある
アカウント画面とニックネーム。
福原のだ。

「交換しちゃった♪美葉菜ちゃんかわいいよね💕女子の私でもキュンとするもん。」 

よく言ったもんだ。

最初は福原のことを
嫌ってる感じさえあったのに
実際に会って話してみて
メロメロになったみたいだ。

「あー私が男だったら
絶対好きになるのになあ」

「ふーん。」

生返事をしながら
グラウンドの方に目を向けると福原がいた。
Eは次の授業は体育らしく、
福原も数人に囲まれて
楽しそうに話しながら歩いている。

へー。さっき美音が可愛いって言ってたけどこんな風に笑うんだな。

いつも俺と目が合うと真っ赤になるか、
この前は笑顔っていうか、
ニヤけてたもんな。

ふと、告白された時に投げつけられた
消しゴムのことを思い出した。
引き出しに入ってるっけ、
返さなくっちゃな。

「おーい!美葉菜ちゃん、千晶ちゃん〜」
窓をガラリと開けて美音が手を振ると福原もその隣にいる女子も笑顔で手を振り返す。
しばらく手を振って
「バイバイ〜」と窓を美音が閉めても
福原を
いつのまにか目で追ってしまっていた。

それは美音に肩を揺すられ零に目の前で手をひらひらされるまでずっと。