溢れる涙を こぼさないように

じっと目を見開いて 務を見つめる私。


何か言ったら 少しでも動いたら

多分 涙を流してしまうから。

ギュッと 務の指を握って。


” インスピレーション ” と務は言った。


あの夏から 務を忘れられなかった理由。

務と一緒にいて 満たされた理由。


本能が 求め合う人だったから。


忘れられるはずが なかった。


涙を堪える私に 

「ほら レーナ。焼けたよ。」

と照れた顔で お肉を取ってくれる務。

頷いた途端に ポロポロと 涙が落ちた。


「泣くなよ。帰りに ケーキ買ってあげるから。」

そう言って 務は 私の指を 握り返す。


焼肉を食べながら プロポーズされたこと

泣きながら食べた 焼肉の味。


私は ずっと忘れないと思う。