「ちょっと 乗ってみる?」

務は ポケットから キーを出す。


助手席に乗ろうとする私に

「レーナは こっち。」

と運転席のドアを 開けられて。


「わぁ。新車の匂いがする。」

運転席に座って 車内を見回していると

「そのうち ここに チャイルドシートを付けるんだ。」

と務は言って 照れた顔をした。

私も 急に 恥ずかしくなって 下を向く。


「私。お義父さんに お礼を言わないと。」

「気にしなくていいよ。」

「駄目。けじめだから。荷物 片付いたら 務の家に 連れて行って。」

「レーナ 嫌じゃないの?」

「うん。部屋の家具だって お義父さんに買ってもらったんでしょう?」

「プッ。何で わかったの?」

「私 務のお尻 ビシビシ叩かないと。」


甘い気分だけじゃ 結婚なんてできない。

私は 芽生えた 責任感に 自分でも 驚く。