あの取引から一週間後、少女は男とのやり取りを思い返していた。
一週間前、あの男はこう言った。
『あなたの睡眠時間を代償に二億円差し上げましょう。』
そして、男の話は 本当だと信じてその話を受けた。
でも、相手は知らない男だ。なぜ、あんなにも怪しい男を信頼したのだろう。少女は自分自身を軽蔑せずにはいられなかった。
いや、違う。男の話は全て本当だ。
男は
『睡眠時間を代償に二億円差し上げましょう。』
と言ったのだ。
「眠気がなくなる」とは、言っていない。
少女はお金に目がくらみ、男の話を詳しく聞かなかったことに後悔した。少女の記憶によると、寝ないで生きられる、ギネス記録は十一日だ。高校を受験する頃に、少女が生きていることは恐らくないだろう。
「あぁ、なんでお金に目がくらんでしまったのだろう。あの取引はなんの意味もなかった!」
少女は最後にこう言い残して、意識が遠のくのを感じた。