忘却ラブシック ~あまのじゃくな君には騙されません~



 恐る恐るカーテンを引いて、ひょっこりと顔だけ覗かせてみる。

 視界の端で捉えた寝ている人物は、微動だにしない。先程の私と同様に、上からシーツにくるまって眠っていた。顔は見えないけれど、体格が男性っぽい。

 鞄が転がった奥の方には、皺を気に()めない脱ぎっ放しのカーディガンが丸まっている。何から何まで、性格が一目瞭然だ。

「あの〜……もしも〜し? そろそろ起きませんか? 誰かから連絡、来てるみたいですよー……?」

 取り敢えず小声で囁きつつ、忍び足でそっと中にお邪魔する。

 主張の激しいスマホを一旦寝台に置いてから、爪先がぶつかりそうになった鞄をパイプに立て掛ける。ついでに、下手したら起きた時に自分で踏んづけそうな上着も軽く畳んでやり、シーツの上に移動させた。

 一応公共の保健室だし、我が部屋の如く脱ぎ散らかしている本人が悪いので、勝手に触られても文句を言われる筋合いはない。

 そして、反応を待つ。
 けれども、一向に起きる気配が無い。