私は多分、この人の後輩になる。
 下手に目を付けられて入学早々憂鬱な学園生活を送るより、脱兎の如くさっさと帰るべきだ。

 どうも女癖が悪そうな上に、逆光で私の顔もよく見えていなかっただろうし、何事も無かったように去るなら相手の気が逸れてる今がチャンスだろう。

「んー……、式には参加するつもりだったんだけどなぁ。催促の電話が凄い凄い」
「そ、それは、残念でしたね〜……」

 小声で無難な受け答えを意識しつつ、じりじりと距離を取ろうと試みる。

「あの、私そろそろ帰ろうかなと、思ってて……」
「ん? 何で? まだお詫びして貰ってないけど?」

 ……はい? 寧ろ私がお詫びして貰う側だよね?

 噛み合わない話に、幾つもの疑問符が乱舞する。
 募る焦燥感から、一刻も早くこの場から離れるべく密着した腰を引かせるが、そんな私の願いは物の見事に打ち砕かれた。

「寝込みを襲ったお詫びの事、だよ。――ああ、カラダで支払ってくれるのかな?」