とは言え、目先の不安が消えた事は間違いないので、疑いが晴れて小さく安堵する。
さてこれで解放される、と期待したのも束の間、彼は私が握り締めていたスマホをするりと抜き取るや否や、無言で連絡主のチェックを始めた。
あ、あれ? ええと、何でこのまま……?
背中に回された腕の温もりに頭が追い付かない。時折、然り気無く背中や髪を撫でられるものだから、一々反応しそうになる。耐性が無い事が丸分かりだ。
この人、普段からこんな女子の扱い方してるの……?
上級生とは分かっているものの、先程から女慣れしているとしか思えない所作に無意識に引いてしまう。軽い。どう考えても関わってはいけないタイプの人間だ。
うっかり顔を覚えられてちょっとでも繋がりが出来たら、きっと上級生のお姉様達に目を付けられ、何かのドラマの如く呼び出されたりしそうな人間関係を持つ人物に見える。
何となしに考えた自分の考察に段々冷静さを取り戻して来た私は、「今の状況、ちょっと不味いんじゃ?」と、差し迫った危機に妙な焦りがせり上がって来た。
