咄嗟にぎゅっと目を瞑って身構えるが、予想に反して何の衝撃も無い。
恐る恐るゆっくり瞼を持ち上げてみれば、私はどう言う訳か、ベットの淵に腰掛ける形で、起き上がったらしい彼の腕の中にすっぽりと収まっていた。
……何で抱き締められてるんだろう。
「――何? それなりの言い訳があるなら、聞いてあげるよ」
困惑する私を他所に、耳元で囁く掠れ声が、鼓膜に響く。
それは例えるなら、恋人を嗜めるような、とびきり甘さを含んだ声色だった。
思い掛けない展開にされるがままフリーズしていると、背後に回された片腕が優しく頭を撫でる。
「……っ」
無骨な指先が微かに私の首に触れて、頬に掛かる後れ毛を耳に掛けて行く。そうして肩から零れ落ちる毛先をさらりと梳く一連の流れは、かなり手馴れたものだった。
「ほら、早く答えないと日が暮れちゃうけど?」
からかうような言葉で急かされて、頬が火照る。
肌に掛かる息が熱い。
