忘却ラブシック ~あまのじゃくな君には騙されません~



 無理矢理起こす? でも肝心の連絡が無くなったなら無意味……?

 執拗だった連絡がいきなり途切れると、何だか逆に恐ろしい。

 他人のスマホを片手に一人あわあわしている内、私はふと深刻な事態に気付いた。それは何気無く脳裏に浮かんだだけだったが、今の自分を客観視したら有り得る未来の展開に、みるみる血の気が引いて行く。きっと貧血で倒れた時以上に、顔面蒼白に違いない。

「こ、これ、(はた)から見たら勝手に人のスマホ覗き見してると思われるんじゃ……?」

 そして、そう言う嫌な予感は大概(たいがい)的中する。

「――それ以外に、何があるの?」

 私の独り言と、後ろから素早く手首を掴まれるのは同時の出来事だった。

 予期せぬ低音と束縛にびくり、肩が跳ねる。

 相手が男性だとは察していたものの、逃がさんと言わんばかりに手首に強い力が込められ、完全に逃げ場を失った事で体が硬直した。