「ふ……必死だね。――そんなに思い出して欲しい?」

 優しく緩んだ目許(めもと)に、どきりと鼓動が早鐘を打つ。

 とろけるような甘い声で囁かれて、頬が火照る。じんわりと広がる熱が、どうしようもないくらい焦がれる想いが――胸で疼いて仕様がなかった。

「そんなに苦しいなら、早く諦めちゃえばいいのに」

 あどけない顔でそんな残酷な事を言われても、私の意思は変わらない。分かってるでしょう?

「……残念でしたね、先輩。私、結構しつこいの」

 本音を隠した貴方を、暴かせて。

「降参したくなったら、いつでもおいで。そうしたらその時は――存分に可愛がってあげる」


 これは、あの日から始まった私と彼の――奇妙な関係の物語。