最初は怖すぎて目を開けられなかったけど、朔夜は意外にも安全運転で
だんだんスピードにも慣れてきた


次々と移り変わる景色、頬にあたる冷たい風


朔夜の背中の体温が伝わって心地いい




私はすぐにバイクが好きになった






朔夜がバイクを停めたのは、静かで小さな丘の近く


さっきよりも月が近くに見えて、だいぶ上の方に上がってきたのかなと思う


今度はちゃんと自分でバイクを降りてヘルメットを外す


朔夜が先に歩き出して、後を追うように小さな丘を上った






「うわぁ……!!」






そこからの景色に思わず声がこぼれる




キラキラと光輝く街並み


高層ビルも高すぎるタワーも、近くで見ると目がチカチカするだけだったあの光達は
この丘から見ることによって、夜の街の煌びやかなアクセントになっていた


目の前に広がるこの街の光は、私の悩みなんかちっぽけだと言うように広く広く、時には色を変えて大きな存在感を放っている






しばらく絶景に目を奪われていた私の耳に朔夜の声が届いてきた




「やっぱりお前は、嬉しそうに笑った顔が一番似合う」




そんなことを言うのはきっと、私がさっき泣いていたから






「お前が何に悩んでて、何を抱えてんのか
俺にはわかんねぇ 無理に聞き出すこともしねぇよ

でも、」