もう何度目か分からない黒塗りの高級車から流れる景色を眺める




どうして今この車に乗っているのか
私には全くわからなかった、、






学校が終わって正門を出てすぐ、高級車にもたれかかって立つ朔夜を発見した


誰かを待っているらしい




手にはタバコ、スーッと吐き出される煙


やっぱり彼は何をしても綺麗




「バイバイ」


そう言って隣を通り過ぎようとしたけど


「おい」


低いその声に足が止まる


「乗れ」


タバコの火を足でもみ消しながらそんなことを言う朔夜




「え…?」


「乗れっつってんだ」


戸惑う私の腕がつかまれて、あっという間に車の中に押し込まれた


隣に朔夜も乗ってくる


「ねぇ、ちょっとなにすんの!」


「あ、美月ちゃん、さっきぶりー」


焦る私の声とは裏腹に 能天気な明るい声


ニコニコ笑顔の悠が前の席から顔を出していた


「悠!!どういうこと?

今日はバイトないよ、」




Snow Storm でのバイトが決まった日、

『この辺はあんまり治安良くないから、
バイトの日は送り迎えするね』

そんな悠の提案を何度も断ったけれど

全くひかない悠に折れて、バイトの日の送り迎えを頼んだ

もう3回くらいは学校から店に、店から家にとこの車に乗せてもらっていた




でも今日はバイトじゃない


まず私は車に乗ることを了承してないし、こんなの完全に誘拐だ





「みんな良い奴らだから、美月ちゃんも気にいると思うよ」


みんな、とか、気に入る、とか
訳の分からない話をする悠を無視して


「どこ行くの?

ねぇ、

ねぇ朔夜」



「あ?」



怖っ…


不機嫌MAXな朔夜が私をうつす


「どこ行くのってば」


怖さに負けず、ちょっと睨むけど


「うるせぇ 着いたらわかる」




見事にあしらわれた…