爆弾が爆発したのは、その日の朝ごはん後のことだった。


「……じゃあ、よくわからないイベントに振り回されて疲れちゃって、晩ごはん食べるのも忘れて寝ちゃったわけね?」


「そうそう! ほーんと大変だったんだから、あのイベント」


 昨日、晩ごはんの時間に私が現れなかったことに対して、予想以上に果心は心配してくれていたようだ。


「九条くんと何かあったんじゃないかと思って……」


 と、顔を曇らせる果心の推測は、半分当たっている。けれど半分、間違っている。


 九条くんと何もなかったと言えば嘘になる。だけど、彼は館に返ってきてからもあのキスのことについては一切触れようとしなかった。


 彼の中ではもう終わったことなのだろう。私だけが執着し続けるのもおかしな話だと思ったので、私はつとめてあのキス――九条くんの荒い息遣いや柔らかな唇の感触も全部――を忘れることにした。


 だから厳密に言えば、彼と何かあったことは事実だけれど、それが私の頭を悩ませて晩ごはんすら喉を通らなくさせたわけではない。