言い知れぬ不安を感じた。


 手足の先が冷たくなる。失礼になってはいけないと目黒くんのいる場所へ近づこうとするけど、足の震えが止まらない。


「怖がらないでください。僕は、ただ、こうしたいだけなので」


 世界が回った。


 強かに腰を打ちつけて、目黒くんに押し倒されたことを知る。


 そして口づけられた。


「やめて……っ!」


「何ですか? 初めてでもないでしょう」


 ついさっきまで初めてだったんだよ、とは言えない。


 血の味がする。口の端が切れていた。無理やり口づけられたからだろう。


 九条くんがどんなに優しく、私を気遣ってキスをしてくれたのかを改めて思い知った。


 目黒くんのキスに想いはない。ただ、打算的な考えがあるだけだ。


「誰に、吹き込まれたの……!」