6月に入りクラスにも部活にもそろそろなれてきた頃。
美音は奇跡的に同じクラスで3人で行動している。

昼休みに入って3人でご飯を食べていた。
「あと少しで試合だよね?」
美音は勉強に集中したいからといって部活には入らなかった。
「うん!でも、蓮中間テストの点やばかったからさ試合メンバーに入れされてくれるかわからん状況なんよ」
「叶夏はレギュラーにも入れてないじゃん!」
「テストの点が低くて試合に出れませんでしたよりはいいわ!」
「自主練は俺と同じメニューなのになんでレギュラーに入れてないんですかね?」
中間テストで蓮は散々な結果だった。
9教科あるうちの6教科は赤点だった。
「よく増田に赤点だったことを躊躇うこともなく言えたよね。」
増田とは陸上部の顧問でこの学校でも怖い先生で有名だ。
それに増田担当の数学で19点という点数をたたき出した。
「言わんかったら絶対草抜きとかだし。」
「私教えようか?」
美音は新入生代表を任せられるくらい頭がよく、中間テストも学年1位。
「美音に教えてもらえば赤点は免れるよ!」
「自主練…どうすんだよ。」
「期末で赤点なんてとったら増田の頭から角生えるよ?それでもいいの?」
「…良くない。美音頼む」
「うん、勉強なら任せて!」

【蓮side】
──ピーンポーン
自主練したい気持ちは山々だった。
自主練をサボることが俺の中では許せない。
だが叶夏に半強制的に美音の家に行かされた。
「はぁーい、今開けるね!」
学校の図書室でやるのもっていうことで美音の家になった。
「部活おつかれ!上がって」
「お邪魔します。」

何時間たっただろう。
家に行ったのが7時半っていうことは今9時だから1時間半もいるのか。
「もう9時か。蓮の親も心配だろうから帰る準備するか。」
「そうだな。少しわかったよ。ありがとな。」
「いいの。多分明日からも毎日勉強になるから赤点は取らんで済むと思うよ。」
「明日もかー。」
美音はこんなのして何が楽しいんだろうか。
「私と勉強するの嫌?」
「いや!全然!むしろ教えてもらってありがたいよ!」
「良かった。蓮は叶夏といる時はいつも笑顔だから。私なんかと2人で勉強なんかしたら叶夏嫉妬するね。」
一瞬何を言っているのか分からなかった。
叶夏が嫉妬?
「この様子だと気づいてないみたいだね。2人の女の子の気持ちに気づかないなんて罪深い男じゃね〜。」
「2人って…誰と誰?」
「それは蓮が考えなよ。どう考えてもその2人しかいないから。」


【美音side】
「2人って…誰と誰?」
逆に気づかない方がすごい。
危うく私と叶夏って言うところだった。

──プルルルル、プルルルル
気づいたら叶夏に電話をかけていた。
「もしもし、美音どした?」
「蓮って鈍感だね。」
数秒沈黙が続いた。
叶夏は言葉を探しているように感じた。
両親のことを話した時と同じように。
「なんかあったの?」
きっとそれを言うので精一杯だったのだろう。
「叶夏は優しいね。私と蓮とのこと聞きたくないのにちゃんと話を聞こうって思うなんて。私には到底出来ない。」
「そりゃーいくら好きな人が同じでも美音は親友には変わりないもん。蓮が美音のこと好きなら私は2人のこと応援しようと思うよ。」
叶夏はどこまでも優しい人だ。
私は2人で笑いあってるのを見るだけで叶夏に嫉妬していたのに。
「蓮が好きなのは叶夏だよ。幼稚園の時からずっと。叶夏を見つめてた。」
「んなわけないよ」
実は叶夏も鈍感なのかもしれない。


「テスト返すぞー」
気づいたら期末テストも終わり、梅雨明けもしていた。
あれから毎日蓮は嫌々ながらも自主練はせず、美音の家に通っていた。
美音からの変な電話があった次の日、何も無かったかのように話した。
ただ、蓮はその日だけは私と美音を避けていた。
きっと何かあったに違いない。
「れーんー。手応えある?」
「そりゃーな。毎日美音に教えてもらっていたらな。」
「─柏木〜。河田〜。」
名前が呼ばれテストをもらいに行く。
私はいつも半分あるかないかのライン。
蓮のテスト覗き込むと…
「蓮が数学で76点とか明日梅雨戻るじゃん」
「んなことないわ。俺がついに叶夏に勝てる日が来るとはな!」
「美音が教えてなかったら今回また赤点だったんじゃけ、美音に感謝しなさいよ!」
蓮は数学の他にも全部私よりも点数が良かった。
「二学期の中間テストから私も美音に教えてもらおうかな」
「叶夏が来たら絶対勉強にならんわ〜」
「ひどいなー。」
「ほんとのこと言っただけだわ。」
「はいはい、そーですね。」
早く話を終わらせないと美音からの視線がもっと痛くなる。
きっと蓮と話しているからだろう。