「ご馳走様でした。」
みんなの挨拶に、
「それは部長に言ってね?」
と、大河内さんがさらりと笑った。
少しさっきの話が気になった。
「じゃあ今日はお開き!」
と、なったところで、
棚田さんと南部さんは地下鉄。
大河内さんがJR、倉持さんが近鉄だと知った。
ちなみに俺は自転車。
「わー、斎藤さんの自転車かっこいい!」
俺のマットブラックのクロスバイクを
触りながら褒める倉持さん。
「あー、ありがとう。」
「わたし近鉄一人なんで送って下さいよー!」
と、続ける。
えーと、と考えた。
そうなると大河内さんは?
「そうだねー、
もし可能なら駅まで送ってあげられる?」
「…でも、大河内さんは、」
「わたしは大丈夫だから。」
ちなみに3路線が乗り入れている駅が
一番近くにあるけど、JRがダントツで遠い。
「じゃあね!みんな気を付けて帰ってね!」
「お疲れ様ですー。」
と言って別れた。
俺は倉持さんを送って帰った。
その間の会話もほどほどに
大河内さんのことを考えていた。
彼女は誰か頼れる人がいるのだろうか。
弱音を吐ける人がいるのだろうか。
今日初めて思ったわけではなく
転職してからずっと関われば関わるほど
その思いが強くなる。

