上司を甘やかす方法




「何、斎藤と何かあった?」

佐々木部長から声をかけられた。
そうだ、このおじさん、結構鋭いんだった。

「いや、別に。」

「…ふーん。」
意味ありげな反応に逃げたくなる。


「それより、式の準備、進んでるんですか?」


「あー、言うな言うな。」

と、煙たがられて、何処かへ行ってしまった。




あれから、数日。
斎藤くんとはほぼ話していない。

ほぼ、とは仕事の話はするからだ。


「斎藤くん、これお願いします。」

「はい。」

「…。」

もう目も合わないし、
どこかに飲みに行ったり、
うちに来たりも一切ない。


最近の生活が斎藤くんで溢れてたことを
嫌でも痛感する。

気を抜いたら、泣きそうになる。


斎藤くんが好きで、堪らない。


どうすれば正解だったんだろうか。

結果として、斎藤くんに
失礼なことを言ってしまって、
傷つけてしまっただけ。


まずはきちんと話さないと、と思った。


「本当にごめんなさい。」
とメッセージを送った。
直接伝えないでずるい、と思いながら。



「また仕事でよろしくお願いします。」

と一言返ってきただけだった。



ああ、完璧に嫌われたなと、


諦めないと、と言い聞かせた。