「…ねえ、斎藤くん?」
ちゃんと話そう。
「何ですか?」
ソファに座りながら、
わたしの方に体を向けた。
「取り入らなくて、大丈夫、だよ。」
「は?」
「斎藤くん、仕事は出来るし、
わたし、頼りにしてるよ。」
「…」
「…だから、そんなことしなくても、
普段から斎藤くんのことちゃんと評価してる。」
「…」
彼の表情は読めない。
無、、が一番適している。
「それは本気で言ってますか?」
「…。」
「…最低ですね、史花さん。
今までずっと、そう思っていたんですか?
俺、帰ります。」
「…え、あ、斎藤くん。」
そう言うと、さっさと荷物を持って、
帰って行ってしまった。
追いかけられない自分も
声をかけられない自分も悔しくて、
自分で言っておきながら
涙が止まらなかった。

