上司を甘やかす方法




食後ソファで横になり、
いつの間にか寝てしまっている彼が、
堪らなく愛おしくて、寝顔を見つめてしまった。

飲みに行っていた時もそうだけど
ただこうやって家に来て
ご飯を食べて、一緒にテレビを見て寛いで、
そして帰って行く、斎藤くん。
本当に健全な関係に下心は全く見えない。

斎藤くんの答えなんて分かっているのに、
それでも、わたしは、

「…好き、」

ハッとして、口を押さえた。
無意識で言葉にしてしまっていた。


彼は、寝たまま。


…セーフ。


だめだめ。
と思ったら、何だか涙が出てきた。 

じっとしてられなくて、
とりあえず食器を洗おうと、立ち上がる。


これから、どうしようか。

斎藤くんが家に来るって、関係。

これもわたしに取り入ってるのか。



ガチャン!!

考えながら洗い物をしていたら、
手が滑って、コップを割ってしまった。

「あ、すいません。寝てました。
何かすごい音したけど。」

と、キッチンに近付いてくる。

「え!史花さん泣いてる?
どっか怪我した?大丈夫ですか?」

泡だらけの手を洗い、両手をマジマジと見る彼。

「…大丈夫、ごめんね、起こしちゃって。」


「危ないから、俺、片付けます。
本当、大丈夫?」

と、シンクに立つわたしを横に避けて
手早く片付けていってくれる。


「ごめんね、本当。」


「全然、気にしないで下さい。
俺は史花さんが怪我しなくてよかったです。」
と、笑ってくれた。