「斎藤くん、昨日はありがとう。」
朝出勤して、みんながいない間に声をかけた。
今日は部長も出張で、誰もいない。
「いいえ、元気そうでよかったです。」
とは言いながらも、全然こっちを見てくれない。
「わたし、昨日何かしちゃった?」
恐る恐る聞くと、
斎藤くんは何も答えない。
「…ごめんね。」
それだけ言ってデスクに着こうとすると、
「ちょっと、」と腕を引かれて
ミーティングルームへ。
ただ腕を掴まれただけなのにドキドキする。
「斎藤くん!?」
「あーすいません。
大河内さんと部長が仲良くて、
俺迷惑かなと思って帰りました。」
と、頭を少しかきながら話してくれた。
「全然!迷惑じゃないよ!」
「いやいや、すいません。
勝手に押しかけて。」
「え、嬉しかったよ?」
と、言葉にした。
それでも微妙な反応だから、
「本当に嬉しかった!」と強く言った。
「…そう、ですか。」
あれ?ちょっと照れてる?
と思うと急にすごく可愛らしく感じた。
斎藤くんからしたら気を利かせただけの行動も
勘違いしそうになる。
駄目だ駄目だ、と自分に言い聞かせた。
「一つ聞いていいですか?」
「ん?何?」
「部長とはどんな仲なんですか?」

