ただ隣にいて欲しい




今日は土曜日、大会当日だ。

朝から緊張している。

食欲はいつもより一層湧かず、紅茶を飲んで家を出た。

昔から緊張すると無意識に水を沢山飲んでいる。

「深浦緊張してるのか?」

「はい、先輩方の目もあるので」

それを聞いて豪快に笑う顧問の先生

「そんなの気にしなくていい」

「深浦が誰よりも速いことは皆認めている」

そんなこと言われたって、失敗できない

プレッシャーは前から嫌いなのに。

「…最大限頑張ります」



都大会予選、先輩は着々と結果を残していく。

もうゴーグルを付けると何も耳に入らなくなった。

スタートが鳴り無我夢中で泳ぐ。

泳ぎ終わった後にはまわりからの歓声があがっていた。

タイムを見ると自己ベストを更新していた。

結果を出せた安堵感。

都大会出場決定。

緊張が一気に解れ空腹を感じていた。



解散して、駅へ向かおうとする。

携帯の着信が鳴る。

表示を見ると凌空からだった。

「もしもし」

なぜ電話をかけてきたのか嬉しさよりも疑問の方が勝る。

「美雪凄いね、大会見てたよ」

「ありがとう、凌空も水泳なの?」

「うん、奇遇だね。それより今どこ?」

「ちょうど駅についたとこ」

「じゃあ一緒に帰ろ」

返事をする前に問答無用で切られる。

同じ水泳部という事で親近感と運命ではないかという

期待がわきおこる。

我ながら恥ずかしいと思うが、

やはり嬉しさが勝る。

「お待たせ」

安定の低音ボイス

濡れた髪と少しあいている胸元は色気がある。

「お疲れ様」

「俺は結果残せなかったけどね」

くしゃと笑うその笑顔は堪らなく可愛い

何で帰ろう何て簡単に言えるの。

もしかして高校でも色々な人にいってるの。

今度は悲しさが募り胸がきゅーと締め付けられる。

もし、私が付き合いたいって言ったらどうする?