『…帰ったんじゃねーの』

花宮さんを目で追うと、もう1人、花宮さんを目で追ってた岩橋さんが俺に気づいた。

(…今日までに何があったか知りませんけど、隙があったらいつでも奪いに行きますよ、俺)
『…』

真っ直ぐ見た目をお互いに逸らさない。その目は本気だった。

(中途半端なことしてると、先輩相手でも遠慮しないっすよ)
『…うるせぇ』

岩橋さんは走って行ってしまった。

上手くいっちゃうのかなーなんて思ったら、視界がちょっとだけ霞んだ。

(はは、かっこわりー)

本気だったのに、余裕あるフリして、背中押しっちゃったりして。

(感謝してほしいわ、ほんと)