(俺、結構本気で花宮さんのこと好きっす)

タイミングって何事にもあると思うけど、先輩に俺の想いを伝えるのは、きっとこの時が正解ではなかったんだと思う。

「、かけ、る?」
『わり、邪魔した?』

知ってたんだ、花宮さんと岩橋さんが、そういう関係に近いこと。
サークル内では有名な話。でもまだ、近いだけで恋人ではない。
それがチャンスと捉えていたけど、違ったみたいだ。
俺の言葉に少し照れた花宮さんが、岩橋さんを見て明らかに焦ってたから。

(全然っす。俺、用あって今日出れないんで、すみません)

余裕な素振りでその場から逃げた。ああ、全部、間違えた。

『彩さ』
「ん?」
『俺のこと好きなんじゃねーの?』

聞いてしまった、見てしまった。
帰るフリして教室を出て、でもそのまま帰ることは出来ずに2人の様子を伺ってた。
2人になった途端、俺の知らない2人になった。
岩橋さんが、花宮さんにキスした。それに、岩橋さんの大きな背中で見えなかったけど、花宮さんは目にたくさん涙をためて、教室から走り去った。
入口にいた俺には目もくれず。