翔Side

サークルまでの30分。振り固めするための時間だったけど、逃げた彩を探す時間に変わった。

『…いた』
「、何で来るの」

あまり人の来ない旧教室棟の裏のベンチに、彩は膝を抱えて座ってた。

『ごめん』
「…わかんないよ、」
『彩、』
「なんであんなことするの、」
『…』
「翔、は、私のことどう思ってるの、?」

抱えた膝に顔を埋めて、たまに鼻をすする声が聞こえる。
俺は、彩を傷つけないためにこうすることを選んだのに、俺の中途半端さが彩を傷つけてる。

『…ごめん』

俺は彩の隣に腰を下ろした。

「ごめんって、なに?キス、したこと?それとも、気持ちに答えられないって、こと?」

途切れ途切れ、でも必死に思いを言葉にする彩。

『俺は…』

彩が少しだけ顔をかたむけて俺を見た。
その潤んだ瞳と目が合うと、彼女はまたその目を隠す。

『俺、彩のこと、好きだよ。』
「ぇ…」
『ごめん、』

小さな驚き、それから顔を上げた彩の涙は止まってた。

『ごめん、彩。俺、怖くて、』