「翔、来たばっかだったのに」
『別に、飲みたくて来たわけじゃねーし』
「じゃあなんで来たの?」
『…佐々木が、お前が潰れそうって言うから』

お前には、俺の知らないところで酔って欲しくない、

「それがさ、私じゃなくても来た?」

声色を変えた彩にドキッとしながら、振り向かずに歩いた。

『…』
「…答えてよ」
『…どうだろ、』

曖昧に答えた。お前だから、来たんだよ、そう素直に言えないから。

『そっち歩いてんなよ、危ない』

少し心配になって振り返ると、車道側を歩く彼女を内側へ歩かせた。ただの友達にこんなことしない。だけど、俺は友達でいたい。

「そういうの、私だけがいい」
『え?』
「…なんでもない、」
『酔ってる?』
「酔ってないよ」

普段の彩は、こんなこと言わないじゃん、

「…好きなんだよ、翔のこと」

やめて、俺だって好きなのに、

『…ごめん』

思わず立ち止まってこぼれた言葉、彩の背中に届いただろうか。