「ちょ、私が飲んでたんだけど」
『お前さすがに飲みすぎ、佐々木に聞いた』
「は?連絡したの?」
[え?あ、うーん、うん!]

座敷の一番奥、席でないそこに座り込んで、彩の手にソフドリを飲ませた。さっき、同期と飲んでた楽しそうな彩はしゅん、と落ち込んでしまって、俺が居ちゃ、楽しめないのかよ、なんて。

『彩、酔った?元気ない?』
「ん?いや?元気だよ?」
『…そ』

さっきまで笑ってたじゃん。なんでそんな寂しそうな顔すんの?

(そろそろお席の時間が…)

1軒目を追い出され、みんなで二次会どうする?なんて盛り上がってる後ろで、俺は彩の手を引いた。

『お前は帰んぞ』
「え?翔行かないの?」
『お前が帰るから帰る』
「私も帰るって言ってないんだけど」
『俺と帰んの』

皆に『俺ら帰るわ』って声を張る。

『送るから、帰ろ』

えー帰るのー?なんて声が聞こえるけど、そんな声に背中を向けて、彩の手を引いて歩いた。