彩 Side

洋楽をBGMに、流れてく見慣れた景色になんとなく目を向ける。
最寄りよりふたつ手前の駅で一気に車内の人が押し出される。
少し田舎に位置する私の学校まで、束の間だが腰を下ろした。

『はよ』

一番端の特等席を確保した私の隣、足の間にリュックをおろして空席に腰を下ろした大男。

「同じ電車だったんだ」
『人空かないと見つけらんねーな』

イヤホンを外しながら言えば、何聴いてんの?ってその片耳が奪われた。
一度止めたその音を、もう一度再生した。

『あ、俺が教えたやつ』
「最近ずっと聴いてる」
『いいっしょ?』
「めっちゃいい」

そう言えば、嬉しそうに目を細めて笑う。洋楽なんて聴いたことなかった。でも、キミが好きなものなら、知りたいって思う。

「また、なにか教えてよ」
『おっ、ハマった?』
「ハマってるよ!翔が教えてくれるの、間違いないし」

じゃあ…と自分のスマホの音楽アプリをスワイプする。ああ、あと少しで最寄り駅だ。

『やべ、着いた』

リュックを片手で掴むとスマホ片手に電車を降りる。俺のオススメ送っとくわ、と笑う彼は、きっと夜に多すぎる曲名リストをLINEで送ってくるんだろう。
ちゃんと1曲1曲チェックしてしまうのは、惚れた弱み。