遠く、近く、君を。

麗夜、か。名前の通り、夜みたいに冷たいけどなんだか優しい瞳をした綺麗な人。
「君の名前は?」
「水瀬。17歳。高校2年生です。」
短く言い切ってミルクティーを1口飲む。おいしい。甘くて温かくて安心する。
「水瀬って苗字だろ?下の名前は?」
「嫌いなんです。名前。」
そうだ、大嫌いだ。誰にも愛して貰えないのに、愛だなんて。
それに。
「わたし、下の名前で呼ばれた記憶もないし。名前なんかないも同然なので水瀬って呼んでください。」
学校では友達なんか作らなかったし、生みの母親は名前で呼んではくれなかった。