「…大会の前の夜にも影に伝えたけど、私、ずっと佐久間部長を目指してきたの」


「うん…」


「佐久間部長に告白されて、憧れの気持ちを恋愛感情なのかな…ってずっと考えてたんだけど…やっぱり違うって気づいて」


「でも、キスしてたでしょ?」


私がふいっと不機嫌そうに拗ねると、光は申し訳なさそうに俯いた。


「あれは本当に気の迷いだった…ごめん、でもあれでハッキリと違うって気づいた」
 

「?」


「私、影に…あの部長とのキスを見せてしまった自分に凄く苛立ってた」


「苛立ったって…」


光は、俯きながら暗い表情で話始めた。


「憧れだって分かって、あの時断ろうとしたら、ここでは話せないって佐久間さんが校舎裏へ連れ出した時に私…気づくべきだったのにって」



「じゃあ、あのキスって」


「ふいにキスされて、どうしていいか分からなくなって…本当最低だよね、影を傷つけて」


はぁ…とやるせない溜め息をついて、光は暗い表情で俯いた。



「それから、ずっと怖かったんだ…影を失うんじゃないか…って」


俯く光の頬を一筋の涙が流れ落ちる。



「光…泣いてるの?」


光の頬を伝う涙を、そっと優しく拭う。



「私、怖かったの…影が本当に大切なのに、影の気持ちに気づかないふりをしてた」


「…どうして?」


「楽しかった頃みたいに、もし…話せなくなったり、影が私から離れて行ったら…って」


瞳からぽろぽろと溢れ落ちる涙を拭いながら、涙声で言葉が詰まる光にそっと触れる。


私は、光の濡れた唇に優しく唇を重ねた。


涙の滴を唇に感じながら、光をいとおしく思わずにはいられなかった。



そうするとーー
次第に涙は自然と止まり、光はゆっくりと瞳を閉じ唇を委ねた。


この時間が永遠に止まればいいのにーー



私は、心の中で神様に願っていた。