お客様との約束時間15分前に、依舞稀はフロントにこっそりと降りてきた。
もちろんフロントで愛想笑いを浮かべて座っている、彩葉と千里に見つかることのないように、細心の注意を払って行動している。
お客様の迷惑にならない程度に何かを仕掛けてくれれば一番いい。
このまま彩葉達の思い通りになるのだけはごめんだった。
そうこうしている間に時間十分前、お客様が自動ドアを抜けてフロントに近づいていく。
「あの、笹田と申しますが、営業企画部の緒方さんをお願いしたいんですけど」
お客様がそう言うと、彩葉は露骨に申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「笹田様ですね。伺っております」
伺っているも何も、フロントにお客様がいらっしゃるなどとは一言も伝達していない。
「大変申し訳ありません。緒方はただいま、他の打ち合わせに入っておりまして」
「え?そうなんですか」
そんなわけないだろう。
依舞稀は心の中で叫んでいた。
「誠に恐縮なのですが、ロビーでお掛けになってお待ちいただいてもよろしいでしょうか?緒方には笹田様が……」
「笹田様、お待たせいたしました」
彩葉の言葉を遮るように、依舞稀は笹田様へと駆け寄って一礼した。
チラリと彩葉を見ると、驚きのあまり固まっているようだった。
「緒方さん、他の打ち合わせなんじゃ?」
気のいい笹田様は、自分達の打ち合わせのことよりも、依舞稀の打ち合わせの心配をしてくれているようだ。
「当フロントが大変失礼いたしました。まともな確認もせずにお客様に間違った伝達をしてしまうとは。申し訳ありません」
わざとらしくフロントを強調しながら謝罪をすると、笹田様は「とんでもない」と笑ってくれた。
もちろんフロントで愛想笑いを浮かべて座っている、彩葉と千里に見つかることのないように、細心の注意を払って行動している。
お客様の迷惑にならない程度に何かを仕掛けてくれれば一番いい。
このまま彩葉達の思い通りになるのだけはごめんだった。
そうこうしている間に時間十分前、お客様が自動ドアを抜けてフロントに近づいていく。
「あの、笹田と申しますが、営業企画部の緒方さんをお願いしたいんですけど」
お客様がそう言うと、彩葉は露骨に申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「笹田様ですね。伺っております」
伺っているも何も、フロントにお客様がいらっしゃるなどとは一言も伝達していない。
「大変申し訳ありません。緒方はただいま、他の打ち合わせに入っておりまして」
「え?そうなんですか」
そんなわけないだろう。
依舞稀は心の中で叫んでいた。
「誠に恐縮なのですが、ロビーでお掛けになってお待ちいただいてもよろしいでしょうか?緒方には笹田様が……」
「笹田様、お待たせいたしました」
彩葉の言葉を遮るように、依舞稀は笹田様へと駆け寄って一礼した。
チラリと彩葉を見ると、驚きのあまり固まっているようだった。
「緒方さん、他の打ち合わせなんじゃ?」
気のいい笹田様は、自分達の打ち合わせのことよりも、依舞稀の打ち合わせの心配をしてくれているようだ。
「当フロントが大変失礼いたしました。まともな確認もせずにお客様に間違った伝達をしてしまうとは。申し訳ありません」
わざとらしくフロントを強調しながら謝罪をすると、笹田様は「とんでもない」と笑ってくれた。

