契約結婚!一発逆転マニュアル♡

やはり、案の定、予想通り。

従業員達は大騒ぎになった……。

遥翔は出勤するなり管理職以上の人間をホールに集め、朝礼という名の結婚報告会を行った。

そこでも大騒ぎだったのだが、一般従業員への一斉メールで、依舞稀の立場は一変した。

それは勿論、いい意味でも悪い意味でもだ。

歓喜と嫉妬が入り混じり、とても部署で集中してPCと向き合うということはできない状況になってしまった。

しかしこれは遥翔との結婚を決めた時から覚悟していたことで、特別に戸惑うことはなかったのだが。

一番不快に感じたのは、男性中間管理職の媚売りである。

ある程度仕事ができる人は表に出さないのだが、こと大した仕事もできないお飾り役職者は、なんとか上手く依舞稀に取り入ろうとしてくるのだ。

今まで話したこともないような別部署の人間や、依舞稀の企画を『女の考えたものはつまらなくて駄目だ』と見もせずに突き返してきた選考役員など。

副社長の妻になった途端に媚び諂ってくるのだから、鬱陶しさこの上ない。

「どうして男は力あるものに擦り寄るのかしら」

怒涛の午前業務を終えて、依舞稀は璃世、花音、美玖と共に、八神に教えてもらっていた小さな休憩スペースで溜め息をついた。

丸いテーブルにウッドチェアが4つ。

小さな冷蔵庫と給湯器、電子レンジまで完備してあるこの部屋は、全ての物が新品であることから、依舞稀のために急遽作られた部屋のようだった。